ジャドール・ベーカリーの休業日。
僕はアルバイトのラッシと
カフェ・プティットに居た。
今日、彼女との約束がなかったら、家で今頃、拷問にあっていたかも知れない。
ママのお小言攻めっていう拷問にね。
「お休みの日にすみません、ギルバートさん。」
「いや、全然!
むしろ、助かったよ。」
事情を知らないラッシはえ?って表情をした。
「あー、気にしないで。
それより、相談したい事って?」
僕は早速本題に入った。
その事なんですが、と彼女は話し始めた。
聞くと、アルバイト間でのコミュニケーション不足を心配しているようだった。
今現在、ラッシを含め、
ジャドール・ベーカリーには5人のアルバイトが居る。
アリンにビオラにラクシュミ、それからマーガレット。
シム関係は至って悪くはない。
けれど、良いという訳でもないみたいだった。
それほどの関わり合いもないからっていうのが実のところらしい。
ラッシによると。
その為か、業務上でもいまいち噛み合っていない部分も多いようだ。
そういえば、僕もアルバイトの子たちとあまり話した事がないって事に気付いた。
ほら、新聞にショップの悪評が載っちゃった事があっただろ?
評価を取り返すのに必死で、そこまで目がいってなかったよ。
「なるほどね。」
ラッシの話を聞いて、僕はちょっと考えてみた。
「じゃあ、こんなのどうかな?
今度うちでホームパーティーを開こう。
みんなを招待するよ。」
「いいですね!
良いきっかけになります!」
僕の提案にラッシは大賛成してくれた。
「ありがとうございます、ギルバートさん!」
「僕の方こそありがとうだよ、ラッシ。
何か気づいたことがあったら、これからもどんどん言ってね。」
僕がお礼返しをすると、ラッシはちょっと照れくさそうにはにかんだ。
それから、一通り話が終えると、彼女は急に両手をもじもじとし出した。
何だろう?
ショップに関して他にも心配な点があるのかな?
「まだ他にもあるのかな?」
僕が尋ねると、彼女は少し言いにくそうにした。
「あの・・・、その・・・。」
「何?」
「・・・忘れられないんです。」
え?何を?
ラッシが何を言いたいのかさっぱり分からなかった。
「ギルバートさんの・・・」
僕?
僕の何?
「キス。」
え!!
キス???
唐突過ぎて、思わず聞き返しそうになっちゃったよ。
一瞬、魚の鱚が頭に浮かんでしまった。
僕は記憶を探った。
そして思い出したよ。
以前、僕は彼女の気遣いに、感激のあまり、キスをしたんだった。
確か。
うわ、もしかして、ラッシ、死ぬほど嫌だった?
忘れられないって事は、ずっと怒ってたって事かな?
あの時は、感動のあまりしちゃったんだ。
でも、僕としては挨拶みたいなものなんだけれど。
「それで、ギルバートさん、あの・・・、」
あの・・・、の続きが凄く気になった。
ラッシはオープン当時からずっと一緒にショップを支えてくれている子だ。
ジャドール・ベーカリーをよく分かってくれているし、業務も一番熟知している。
そんなショップのエースを失ってしまったらどうしようか。
極力避けたいんだけれど!
僕は覚悟した。
「な、何?」
「ギルバートさん、その・・・。」
その、の後は?続きは?
僕が不安でドキドキしていると、彼女は意を決してはっきりと続きを言葉にした。
「付き合ってください・・・ッ!!!」
え?
彼女の突然の告白に、僕は目が点になった。
これまた予想外の言葉、予想外の展開!
「あの、駄目ですか!?
私、ギルバートさんの事、好きになっちゃったみたいなんです!
お願いします!!」
彼女の真剣なお願いに、僕の返事は・・・、
「うん、いいよ。」