ジャニファーに説教されて、俺は改めて事の重大さに気付いた。
いや、初めて気付いたのかもしれない。
マリー・スーが立ち寄りそうな場所は、思い当たる限り、俺はくまなく探した。
彼女の実家にも行ってみた。
しかし、マリー・スーは何処を探しても、見つけられなかった。
気が付くと、俺は彼女との思い出の場所に立っていた。
ロンドステ。
彼女と初めて出会い、そしてプロポーズした、思い出の場所。
いや、思い出の場所なんて、彼女の中ではもう、消し去られているかもしれない。
そう諦めかけた時、マリー・スーが向こうから歩いてくるのが見えた。
「マリー・スー!」
俺は思わず大声で彼女の名を叫んだ。
彼女は俺に気付くと、なじるわけでもなく、避けて逃げようとするわけでもなく、静かに歩み寄って来た。
「ダニエル・・・。」
ここ数日で、マリー・スーは大分やつれていた。
何故俺は、今まで気が付かなかったのだろう。
何故ちゃんと彼女を見なかったのだろうか。
許されないかもしれない。
それでも、マリー・スーに伝えたい事は山ほどあった。
しかし、あれほど考えていたのに、一気に吹っ飛んでしまっていた。
何からどう話せばいいのか、どうやって伝えればいいのか。
謝罪しても謝罪し切れない程の後悔。
しかし、彼女はこんな俺にも、チャンスをくれた。
俺は彼女の手を引き、店の中へとエスコートした。
「マリー・スー、本当に済まなかった。」
席に着くと、俺は改めてマリー・スーに謝罪した。
「俺が、心の底から愛しているのは、マリー・スー、君なんだ。
そして、マリー・スー、アンジェラ、リリス。
改めて痛感したんだ。
俺には何にもかえがたい存在であるという事を。
もう二度と、悲しませたりなどしない。
失いたくないんだ。
もし、もし許されるのなら、マリー・スー。
本当の良き夫、良き父親として、俺は・・・。」
「ありがとう、ダニエル。」
そこまで言うと、マリー・スーは穏やかな笑顔を俺に向けてきた。
彼女の本当の笑みを見たのは、もしかしたらここ数年振りかもしれない。
そして俺も数年振りに、本当の気持ちを口にしたのかもしれない。
同じ家に居ながら、俺も彼女も、いや、ひょっとしたら、家族全員がすれ違っていたのかもしれない。