昨晩は実家に泊めてもらい、そして早朝には、私は実家を後にした。
でも、真っ直ぐに自分の家へは帰れなかった。
見送る時も母は優しい笑顔だったわ。
私は母の言葉を思い出しながら、あちこちと彷徨い歩いた。
そして彷徨いながら、ずっと考えていた。
自分にとって一番大切なもの。
私が支えとするもの。
そして、私自身が守りたいもの、支えたいもの。
気が付くと私は、いつの間にか
ダウンタウンの
ロンドステに向かっていた。
「マリー・スー!」
その声に顔を上げると、そこには驚きながら立っているダニエルの姿があったわ。
「ダニエル・・・。」
「マリー・スー!
一日中君を探していたんだ。
俺は、俺は・・・。」
慌てふためいているダニエルとは逆に、私の心は何故かとても落ち着いていた。
「ダニエル、脇に抱えているそれは?」
「え、ああ、えっと、これか?
これは・・・何だっけかな。
カンニャム・ナンニャム?
違うな、 カンナム・ナンナムだっけかな?
いや、俺にもよく分からないのだが・・・。」
思わず小さく笑ってしまったわ。
「カンヤム・カンニャム。
お茶っ葉よ。
・・・そう。
実家にも訪ねてくれたのね、ダニエル。」
「え、ああ、いや、その・・・。」
「私、気が付いたらここに来ていたわ。」
視線を落として、ダニエルも頷いたわ。
「・・・俺もだ。
ここで探していた君に会えるなんて・・・。
ここは─、」
一瞬、風が小さくそよいだわ。
そう、静かに、とても小さく。
「ここは、俺が初めて君と出会い、
そして君にプロポーズした場所だ。」
俯かせた視線をもう一度上げて、ダニエルは真っ直ぐと私の瞳を見つめ返して来た。
風がまた、優しくそよいだわ。
「ねぇ、ダニエル。
私、お腹が空いたわ。」
「ああ、俺もだ・・・。」
「ねぇ、改めてもう一度、私を食事に誘って頂けないかしら?」
「あ、ああ!勿論、勿論さ!
もう一度と言わず、何度でも俺は君を誘うよ!」
そう言うと、彼は私の手を引き、エスコートしてくれたわ。
私の心がこんなにも落ち着いていたのは、当たり前だったんだわ。
答えなんて、本当はもう見つけ出していたのだものね。