昨日から突然現れた犬っころどもを見ていたら、ババアがにこにこしながら寄ってきた。
「おじいちゃんのところで、貰い手に困っていてね。 それで、昨日、うちで里親になる事にしたのよ。」
何だよ、気色ワリィ。 別に訊いてねぇよ。 でも、そうか、じいちゃんちんとこの子犬だったんだ。
「2人とも貴女にも会いたがっていたわ、リリス。 今度はリリスもいらっしゃいって言っていたわよ。」
ババアなんて、シカトだよ、シカト。 あたしは無言のまま、足元に絡み付いてくる犬っころの内、一匹を抱き上げた。 だけど、ババアはその場を離れなかった。 あたしと同じようにもう1匹の方を抱き上げて、相変わらずあたしの横に立ったまま。 にこにこしやがって。 さっさと仕事にでも行けばいいのに。
「こっちの女の子はベルっていうのよ。」
だから、別に訊いてねぇよ。 マジでイライラする。 あたしがイラついてんの分かってんだろ? 気が付いてんだろ? よしよし、いい子ね~なんて、気色悪い猫なで声出してんじゃねぇよ。 何なんだよ、さっきから。
「・・・。 こいつは?」
仕方がないからあたしはもう1匹の犬っころについて訊いた。 本当は、口なんかききたくもなかったけど。 ただ、1匹だけしか名前わかんないなんて、気持ちわりいじゃん。 ババアしか訊く相手が居なかったから。
あたしの質問に、ババアとベルがこっちを向いた。 聞き取れなかったのか、返事はねぇ。 何?って目でこっちを見てやがる。 めんどくせぇな。 あたしはぶっきらぼうにもう一度言葉を口にした。
「こっちの犬っころの名前だよ。」
ババアが笑顔で答える。
「そっちの男の子はね、チャド。 本当は、もう1匹居たのよ。 フランっていう男の子。」
チャドか。 というか、もう1匹居たんだ。 ・・・何で2匹だけなんだろう。
「フランの方は先に貰われてしまっていたの。 もっと早くにうちが貰っていれば、 兄弟3匹で一緒に暮らせたんだけれど。」
ババアの話を聞いて、あたしはふうん、とだけ答えた。 3匹で一緒に生まれてきたのに、1匹だけ一緒に暮らせないなんて。 犬っころでも、やっぱり淋しがるんだろうか? あたしは一瞬、何となく淋しい気持ちになった。
「あら、リリス。 スクールバスが来ているわよ。」
ババアに言われて、あたしは外に目をやった。 やべぇ、急がねぇと。 あたしが慌ててチャドを床に降ろすと、いってらっしゃいって声がした。 ババアの口から、”いってらっしゃい”って。 笑顔で。 あたしに向かって。 あたしはそれには答えず、そのまま玄関に向かった。 何なんだよ、マジで。
居心地の悪い違和感を感じながら、あたしはスクールバスに駆け込んだ。 駆け込みながら、あたしは別の事を思い出していた。 昨日の、あのムカつく金髪野郎。 アンジェラに文句言っとくの忘れてた。 ダークが気を悪くしてなきゃいいんだけど・・・。 クソ。 調子狂いっぱなしだ。 全部ババアのせいだ。 |