今晩は、ディナを家の夕食に招いた。 私の婚約者として、新しき妻になる女性として、家族全員に紹介する事が目的だ。 カサンドラの結婚式の翌日でもある。 早急過ぎるとも思いもしたが、皆、快く受け入れてくれた。 食事もつつがなく進み、暫しの歓談の後、私は屋敷の展望台へと彼女を誘った。 一面に瞬く星を背にし、月明かりに照らされる彼女は何と美しい事であろうか。 まるで慈愛に満ち溢れた女神と見紛わんばかりではないか。 その美しさに酔いしれている私に、彼女は羽毛の如き心地よい柔らかな声で語りかけてきた。
「とても綺麗な星空ですわね、おじ様。 こんなに素敵な星空も見られ、 楽しいお食事の時間も過ごせるなんて。 お招き頂けて、本当に感謝致しますわ。」
彼女の心からの言葉に、私は答えた。
「私の方こそ、感謝しているよ。」
そう、感謝すべきは私の方なのだ。
「むしろ、ニーナが病に伏している時だというのに申し訳ない。」
「いいえ、おじ様。 謝らないで。 病気と言っても、風邪をこじらせているだけですから。 大分良くなっているのだけれども、 皆さんにうつしてしまうかもしれないからって、 大事を取っているだけですわ。 今晩のお食事のみならず、 結婚式にもご招待して頂いていたのに。 私からもお詫びを申し上げますわ。」
「それこそ君達が謝る事ではない、ディナ。 君もニーナも心優しき姉妹である証なのだから。 よくなったら、彼女も遠慮なく、いつでも遊びに来るといい。」
「重ね重ね感謝しますわ。 本人も残念がっていましたもの。 おじ様の言葉、きっと喜びますわ。」
「ふむ。 ところで、ディナ。 その”おじ様”というのはもう止めないかね? それとこれは私からの頼み事なのだが・・・。」
私の”頼み”という言葉に、何かしらと、彼女は少しばかり首を傾げて見せた。 美しいばかりだけでなく、真、何と愛らしい女性である事か。
「君の心の優しさから来る気遣いだと、私にも充分分かっている。 しかし、ディナ。 もう気遣う必要はあるまい。 私にも周りにも、誰にもだ。 幾らばかりでも、徐々にでも構わん。 もっと君の普段の通りに接してくれると、 私は尚、嬉しいのだがね。」
私がそう告げると、彼女はほんのり微笑んだ。 そして、ええ、モティマー、と、私の名を口にした。 私は近々、本当に彼女を新しき妻として迎え入れよう。 最早、ベラの事は心の奥底に仕舞おうではないか。 しかし、それでもだ。 世界の何処かに居るであろう、ベラ。 彼女がこの瞬間瞬間の中でも、幸福であらんことを私は祈っている。 これから先も願い続ける事であろう。 |