「・・・不気味ね。」
マリー・スーの言葉を聞いて、俺は更に恐怖を覚えた。
「父さんの事だから、今日にでも早速、 怒鳴り込みに来るかもしれないって思っていたわ。」
「き、昨日の今日だし、 義父さんも少し怒りがおさまったんじゃないか?」
どもりながらも俺は前向きな意見を述べてみた。 しかし、それもあっさりとマリー・スーは崩してくる。
「甘いわ、ダニエル。 本当に怖いのよ、うちの父さん。」
ああ、止めてくれ、マリー・スー。 これ以上、俺を不安にさせないでくれ。 俺が返答に困っていると、マリー・スーはクスッと笑った。 ・・・もしかして、俺が悩んでいるのを楽しんでいないか?
「ごめんなさい、ちょっとおかしくて。 大丈夫よ、ダニエル。 きっと母さんが上手く宥めてくれていると思うの。 明日母さんに電話して、様子を訊いてみるわ。」
ああ、そうだな。 それが一番だ。 あの穏やかな義母がきっと何とかしてくれている筈だ。 そうに違いない。 そう考えると、不安が大分和らいだ。 これで今夜は安心して眠れるよ。 実は、昨日は義父との一件が気になっていて、なかなか寝付けなかったんだ。 俺がホッと胸を撫で下ろすと、マリー・スーは、それはそうとと言いながら、話題を切り替えた。
「リリスの事なんだけれど・・・。 大学をどうするのか考えなきゃいけない時期だわ。 あなた、何か聞いていない?」
娘のリリスの名を聞いて、俺はまたドキッとした。 そうだ、気に掛けるのは義父の事だけじゃない。 リリスともう少し話す機会を増やそうと思いつつも、いつも撃沈していたんだった。 そんな俺が、リリスから何かを聞いている筈もない。
「いや、何も。 しかし、進学は考えていないんじゃないか? 幼い頃から、リリスは勉強に対して、 あまり情熱的ではないと思うのだが。」
「・・・そうね。 でも、リリス、スクールカウンセラーの先生と居たのを この前、アンジェラが見掛けたようなのよ。 もしかしたら、って思って。 あなたからも今度、リリスに訊いてみてくれないかしら。 私からも訊いてみるわ。」
「え、あ、うん、そうだな。」
マリー・スーに頼まれて一応返事はしたものの、リリスが素直に答えてくれるかどうか・・・。 どうやってさり気なく反抗されずに訊きだせるか、思い悩んでいる俺の横で、マリー・スーは付け加えた。
「もし、進学を考えていないようならそれでもいいの。 今まで、私、あの子に対して、無関心過ぎていたわ。 リリス自身について、考えた事が無かったと思うの。 彼女が何を思っているのか、やりたいのか。 だから、彼女にやりたい事があるのなら、 それを応援したいわ。 無いと言うのなら、親として一緒に探していきたいのよ。 大学の話を通して、少しでもそれが分かれば、 彼女にも分かってもらえればと、思うの。」
マリー・スーの話を聞いて、俺は深く頷いた。 同時に、マリー・スーは強くなったように思えた。 俺もマリー・スーに負けないよう、親として、頑張っていかなくてはならない、そう、感じたよ。 |