「うーん、そうだな。
ポルソスにもそろそろお嫁さんは必要だな。」
俺が答えると、アーマンドは俺の脇腹を軽く、肘で小突いてきた。
「バカヤロウ、犬の話じゃない。
お前だ、お前の嫁さんの話をしているんだよ。」
タクシーの中での話だ。
俺がフリーだというのが、彼にはどうにもこうにも気に掛かるらしい。
昼飯付き合えよと呼び出されたが、移動中ずっとこの話だ。
俺が独身のままだと、彼に何か不都合でもあるんだろうか?
「で?
どんな感じの女性がタイプなんだ?」
オーシャレファミリー食堂に着くと、同年代くらいの女性支配人が案内をしてくれた。
ソファーに腰を下ろした瞬間、話題はまたそれに戻った。
水を口にしながら俺は考えた。
ポルソス、昼ご飯ちゃんと食べているかな。
帰ったら、散歩に連れて行ってやろう。
そろそろ次のトレーニングも始めないとな。
それから・・・
「おい、シド。
聞いているのか?」
低いトーンと冷たい視線を投げかけられ、俺は意識をリアルに戻した。
「き、聞いてるよ。
そうだな、この前も言っただろ?
健康そうで・・・」
「ストップ!
それはもういいんだよ。
もっと具体的に答えろよ。
色々あるだろ?
髪の色だとか─、」
ニヤリと笑って彼は続けた。
「お尻とか、な。」
アーマンドは尻フェチだ。
”ケツはデカイ方がいい。
目の前で振られてみろ、ムラムラするぞ。
しかも安産だ!
おっぱいも捨てがたいがな。
何たって母性の象徴だ。”
アーマンドの言葉だ。
俺じゃない。
彼の優先順位は、お尻、胸、顔の順らしい。
「プロポーションは何でもいいけどね、俺は。
元気で健康そうなら。」
この返答に、アーマンドが肩を落としたのは言うまでもない。
「OK、分かった。
質問を変えよう。
このレストラン内ならどうだ?
この中でなら、どの女性を選ぶ?」
そう言われ、さっき席を案内してくれた女性支配人の姿が目に入った。
元気で朗らかとした雰囲気。
ハキハキした話し方も良い。
ああいう感じの女性は好きだな。
と、思ったが俺はこう答えた。
「居ないな。」
言ったら最後、彼の次の行動は容易に想像できるからだ。